職質アンチパターン

無責任な事を書きたい

チベットの死者の書読んだ

原典訳 チベットの死者の書 (こころの本)

原典訳 チベットの死者の書 (こころの本)

いい本だった。いい本だった気がする。

僕は仏教に詳しいわけでもないし、むしろ門外漢ですらあるので、誤った認識をしているかも知れないけれど感想みたいなものを書く。

 

すごい乱暴に言うと、この本に書いてるのは「密教最高だから密教を信じよう。信じてればそれだけで解脱できるよ」みたいな内容で、すごくわかりやすい。「わかりやすい」って言うのは「教え自体が平坦で簡単」とかそういう意味ではなくて、スタンスがわかりやすいってことで、そのスタイルは一貫してて良い。殺人だとかそういう重大な罪を犯しても、密教を信じて仏とかに深く帰依すれば解脱できるとか書いてて、超インスタントな世界観ですごい。

この本が言うには、人間が死んだら「バルドゥ」って状態になって、そこで覚りを開かないと解脱が出来ないわけなんだけど、バルドゥって状態は結構ひどくて人間 (死者) を惑わそうとして色々な困難をけしかけてくる。端的に言うとこれは嫌がらせで、この嫌がらせのせいで覚りを開けないと、解脱出来ない。また輪廻転生しなきゃ駄目な感じになるから大変。なので、この本にはそれをなんとか助けるために書いてある導きの言葉を死者の耳元で囁け、とか書いてある。しかも、その導きの言葉を耳にしてそれに従うだけで解脱できるとか書いてあってすごい。言葉を聞くだけで、生前に修行とか瞑想とかしてなくても、ましてや仏に対する信仰心とかがそこまでなくても解脱が出来るらしい。スピードラーニングも真っ青。

チベット仏教面白いなと思ったのは、結構妥協を許しているところで、「理想は先輩の師僧に導きの言葉を唱えてもらうのが良いが、もしもいなければ一緒に修行していた同僚の僧侶に唱えてもらいなさい。それすらも存在しなければ、字が読めて正しく音読出来る人に読んでもらいなさい」とか言ってて、まじで感が強い。あと、死者自身が愚鈍でどうしようもなく、地獄行きが不可避な場合でも、遺族とかがちゃんとした弔いの儀式をやってくれて、それに喜びの感情を示せばそれだけで地獄行きの運命は自動で取り消しになる、っていうのも書いてて面白い。良いシステム。

あと、この本読んでると解脱のチャンスが無数にある事がわかって嬉しい。あるステップで解脱に失敗したら、更に次のステップに進んで、そこでも失敗したらまた更に次のステップ……みたいな感じで20回くらいリトライ出来る。Java例外処理っぽくて面白い。

この本の良い所は具体的な数字が至る所に出てくるところで、例えば「この言葉を三遍あるいは七遍囁きかけろ」とか「死後3日半で」とか「死後の意識は9倍明晰」とか、そういう感じ。数字が具体的なだけでリアリティが増す。

 

そんな感じで良い教えが沢山書いてるし、死後の世界の話みたいなのも知れて良かった。この本を読むと、導きの言葉がうっすらと頭に入るから「俺も解脱できんじゃね!?」って感じになるんだけど、多分無理だと思う。攻略本立ち読みしても家に帰った頃には内容忘れてるだろうし、大体これもそんな感じだと思った。

 

それはそうと、この本の中に登場してくる神とか仏の名前を見ると、常に女神転生が脳裏に浮かんで、「この神は合体素材によく使った」みたいな思い出が呼び起こされて不敬な感じだった。