職質アンチパターン

無責任な事を書きたい

ホットヨガにはじめて行った

このツイートにはすべてが詰まっている.ホットヨガは本当にやばい.生半可な用意や,覚悟では,死が待ち構えているであろう.

ホットヨガといえば,意識の高い,キラキラした,若く,そこそこ収入に余裕のある男女が,合コンの時に趣味として披露する為に存在しているものだと思っていた.
そんな折,ホットヨガは肩こりや腰痛に効くというインターネットの文書を読んだので「それじゃあどらどら軽くやってみますか,ホットヨガってやつをヨ」という気持ちでホットヨガに臨んだのであった.この記事はその記録である.なおこの際,僕自身の問題であるところの意識が低いだとか,キラキラしてないだとか,貧であるとかには目をつむることにした.ちなむと僕は合コンにも行かない.そして尿酸値が高い.

運が良いことに,僕が日々通っているスポーツジムではホットヨガを週次で催しているため,曜日を合わせて参加した.それまでホットヨガのホの字も知らなかった僕は,ホットヨガに参加している人たちを「キラキラしていらっしゃる」と尻目にしながら,ウェイトトレーニングマッシーンや,ランニングマッシーンや,オープンストライド (擬似的な山登りみたいな事が出来るマッシーンです) のあるフロアへ移動していた.まさか,ホットヨガ会場があんな地獄の様相を呈しているとはその当時一ミリも理解していなかったのである.

ホットヨガ会場は一見すると,色とりどりのマットが敷いてある単なる広い部屋で別段不思議なところはない.しかし入ってみるやいなや,熱気と湿気が全身を襲った.真夏の東京よりも暑く,湿度がすごいのではないか.その空間にいるだけで汗がじわじわと吹き出してくる.なぜわざわざこんな不愉快なところでヨガをやるのか.そもそもヨガとは……とのっけから意味不明の事が多すぎて心を折られそうになる.

ヨガ部屋には先達がたくさんいて,人々はガジェットを持ち歩いている.バスタオル,ハンドタオル,大量の水,霧吹き,などなど.事前に聞いた情報ではバスタオルと水さえあれば良い,とのことだったので素直に従っていたがこの時点でミスを犯していたことにその後気づくこととなる.ここでのバスタオルは「汗を拭くため」にあるのではなく「ヨガマットの上にしくため」に存在しており結果としてバスタオルで汗を拭くことは叶わない.別途汗拭きのためのタオルが必要だったのだ.気づいた時には既に遅く,ハンドタオルの無い僕は全身ぐちょぐちょの汗達磨に成り下がるのであった.そして当然のことながら常軌を逸した量の発汗があるので,水分は必要不可欠だ.それを甘く見ていた僕は500mlのイオンウォーター (しかも飲みさしのやつ) しか持ち込まなかったので,死を迎えることとなるのであった.(ところで霧吹きは何に使うのか,最後まで分からなかった.僕が知らないだけで,ヨガでは畳を貼ったりするのだろうか?)

ヨガ自体やるのがはじめてだったので,「今から何をやるんだか、わからないけど、やるぞー」という状況だったのだけど,親切なインストラクターの人に導かれながら様々な理不尽なポーズを取ることに成功していった.しかし蒸し暑い理不尽な環境で,理不尽なポーズを取らされる,理不尽な催し……成功体験とは裏腹に,僕は次第にいらついていった.肩こりや腰痛よりもよっぽどひどい体験をさせられている……これは苦痛の前借りなのではないか……そうした思いが募っていった.そしてこれは知らなかったんですが,ヨガは想像以上に筋肉を使う.特定のポーズを取ったり,バランスを取ったりするためだ.これを知らなかった僕は,ホットヨガの前にたっぷりウェイトトレーニングを行うという愚行に出てしまっていた.結果的に筋肉は疲労しており,簡単なポーズを取るのにも一苦労,バランスに至っては派手に転んでしまいとなりの中年男性に笑われたのであった.許せん……そもそも僕は普段はPerlJavaや,そういったものを書くタイピング人間なのだから,こんな椅子のポーズやら犬のポーズやらラクダのポーズやら,こんなのは,日常生活に出てこない意味不能の動きなのだよ,なんなんだ……クソ,なんとみじめなのだ……そうした気持ちが去来する.暑い,苦しい,痛い,身体が変な方向に曲がっている,暑い,つらい,なんだこれは.しかし途中で帰ろうとすれば,二度とは挽回できないチキン野郎の烙印を押されるであろう.歯を食いしばるしか無かった.

しかし時間が経つにつれて身体が慣れてきたのか,様々なポーズを難なくこなせるようになってきた.身体の特定の部位が伸びていくのを感じる……肩が軽くなった気がする (1度でそうはならないだろうから,これは錯覚であろう)……という風に,ある種ハイにキマっている状態になっていくのである.慣れてくると異常な筋肉や異常な筋が伸びている感覚が得られて面白さがある.とは言え過酷な環境ではあるのでさっさと時が過ぎ去って欲しかった.プログラムはキッカリ1時間で組まれており,その間ほとんど動きっぱなしなのである.本当に死ぬかと思った.

全てが終わる頃には身体的にも精神的にも完全にグロツキーになっていた.にも関わらず,なぜかインストラクターの人はありえないほどピンピンしていた.1日に何回もこういったプログラムをこなしているはずなのにである.死なないのか,死を考えたことはないのか.彼女は本物の女だった.僕を笑った中年男性もピンピンしていた.ピンピンが高じすぎてその後水着に着替えてプールへと去っていった.彼も本物の男だった.彼らだけではない,その会場にいた人たちの多くは,ホットヨガのプログラムが終わった後,笑顔で挨拶をかわしあい,はつらつとして去っていったのである.本物の人間だ,本物の人間が集まるところこそがホットヨガなのだ.その一方で僕はどうだ.無様にも汗みどろになり,息は上がりきり,それどころかそそくさとシャワールームへと逃げ込んで冷水を浴びているその体たらくはなんだ.こんなことでは,駄目だ.ホットヨガを極めなければならない.

そうして毎週ホットヨガへ通うことを決意したのでありました.肩こりとか腰痛に効くとか,そういうのはどうでも良くなった (効いてくれればなお良いが).本物を求める心だけが,そこにはある.

まとめ

  • ホットヨガはつらい
  • ホットヨガは厳しい
  • 軽い気持ちでやると死ぬ
  • ホットヨガを趣味だと公言している意識高い人たちはすごい,つまり本物の人間
    • 今までなんかすみませんでした
  • 水分は1リットル以上必要
  • バスタオルは汗拭き用ではないので,汗を拭くために別途タオルが必要
  • 事前にウェイトトレーニングとかはしないほうが良い
  • ホットヨガをやると本物の人間になれる